公開日：2023/04/15

25th Season

#25-4　メッセージボックスを完成させる

　前回、オールインワンのマイコンボードM5StickC Plus(下図)を使って作り始めた、メッセージボックスを完成させたいと思います。



　残りの設計を進めて行きましょう。

CdSセルの抵抗値を検知する

　さてさて、システム(ハードウェア)としては、もう一つ、箱の開閉を検知するセンサが必要です。

　箱の開閉を機械的に検知するのではなく、間接的に周囲の明るさで検知しようと思います。以下の記事でオルゴールを作った時に使ったのと同じ手法です。

　　「#19-2　オルゴール化328duino」

　上の記事と同様、今回も、周囲の明るさを検知するのにCdSセルを使います。CdSセルは、周囲明度によって抵抗値が変化する素子です。こちらの制御方法を復習してみてください。

　回路図としては、以下図の様になります(使い回し)。



　上図は、オルゴール化328duinoの時に使った回路図の使い回しなので、以下表の様に読み替えてご覧ください。

　M5StickC Plusは折角のオールインワンなので、なるべく外付け回路を削減して使いたいと思います。そこで、M5StickC Plusボード上でショートされている、G36／G25端子を使います(下図)。

• デジタル端子(G25)の方は、pinMode()関数でINPUT_PULLUP指定する。
• 上回路図のRpuに当たるプルアップ抵抗として、ESP32の内蔵プルアップ抵抗を使う。
• 同回路図のD15端子として、ESP32のG25端子を使う。
• アナログ入力端子(G36)の方は、analogRead()関数でアナログ値を読み取る。
• 上回路図のA0入力端子として、ESP32のAD変換器入力端子G36を使う。
• この処置によって、CdSセルをG36／G25端子とGND端子に差し込むだけで、周囲明度を検知することができるようになります。
• ブレッドボードなどを使って、外部回路を追加する必要がありません。

　プルアップ抵抗値Rpuと、CdSセルの抵抗値の分圧がAD変換器から読み出されます。M5StickC PlusのanalogRead()関数の場合、読み出し値は0〜4,095[LSB]の12ビットデータです。以下表のような関係にあります。

　周囲明度の判定で、CdSセルの閾値電圧を決めなくてはなりません。抵抗分圧の相手はESP32の内蔵プルアップ抵抗Rpuなので、個体差があります。即ち、各自が測定して適切な閾値を設定できる必要があります。

　　const　int　cds_THSH=2048;　　// cds: threshold 0~4095 [LSB]

　これに対応するため、シリアルモニタから受け付けるデバッグ用のコマンド【cds】に、CdSセルの電圧値をシリアルモニタに表示する機能を持たせてあります。

詳細設計

　ソフトウェアの詳細設計に移りましょう。

メッセージボックスのU/I

　メッセージボックスの動作としては以下となります。

• 箱が開いたら、メッセージを表示して、音楽を演奏する。

　基本的にはCdSセルで明るさを検知して動く、だけですので、スイッチ操作などのU/Iは必要ありません。ですが、周囲明度によって動作が自動的に切り替わるため、明るい場所で箱内に設置しようとすると、勝手に明るさを検知してメッセージ再生が始まってしまいます。

　そこで、メッセージ再生を中断したり、箱内に設置する準備を容易にしたり、等と言ったU/Iを定義しておく必要があります。

　　メッセージボックスのU/I：

• 明るい所では、CdSセルが明るさを検知して音楽演奏とアニメーションを再生する。
• その状態でSW-Bを押し続けると、再生を中断して待機状態に戻る。
• 待機状態では、一旦暗くなったことを検知して、再び明るくなるまで再生が始まる事は無い。
• 待機状態にある間、パイロットランプ(LED_BUILTIN)を点灯する。
• 暗くなった事を検知したら、パイロットランプを消灯して、再度明るくなるのを待つ。
• パイロットランプは、動作状態を確認して、確実な動作に繋げるための物。

　ソフトウェアの動作には、いくつかの状態が必要となるので、次節の通り、ステートマシン(有限状態機械)を形成して制御します。

状態遷移

　変数mbx_stateを使って、loop()関数内で状態遷移しながら制御します。

　　各状態(mbx_state)と、その動作：

• mbx_WTDARK：　暗くなるのを待つ。
• CdSセルで暗さを検知したら、mbx_CFDARKへ遷移。
• mbx_CFDARK：　暗さを再確認する。
• mbx_msec_CONF[ms]後に、もう一度暗さを確認して、
• 暗かったら、mbx_WTBRGHへ遷移。
• 明るかったら、mbx_WTDARKへ遷移。
• 一瞬暗くなった場合の誤判定防止用状態。
• mbx_WTBRGH：　明るくなるのを待つ。
• CdSセルで明るさを検知したら、mbx_CFBRGHへ遷移。
• mbx_CFBRGH：　明るさを再確認する。
• mbx_msec_CONF[ms]後に、もう一度明るさを確認して、
• 暗かったら、mbx_WTBRGHへ遷移。
• 明るかったら、mbx_PLYMSGへ遷移。
• 一瞬明るくなった場合の誤判定防止用状態。
• mbx_PLYMSG：　メッセージを再生する。
• ビットマップデータを表示しながら、音楽を演奏する。
• SW-Bが押されたら、再生を中断して、mbx_WTDARKへ遷移。
• 4×mbx_msec_CONF[ms]以上の間、暗さを検知すると、mbx_WTBRGHへ遷移。

　上図の様に状態遷移図を描いておくと、理解し易いです。

プログラム

　以下に、完成したプログラム(一式)をリンクしておきます。M5StickC Plus開発環境の立ち上げは、こちらを参照してください。

　すべてのヘッダファイルは、プログラム本体(m5cp_message_box.ino)と同じディレクトリに配置してください。

※コンパイルには、M5cp-PSライブラリが必要となります。リンクを辿ってインストールしておいてください。


　コンパイルしてM5StickC Plusに書き込むと、シリアルモニタから以下のコマンドを受け付けています。

　　シリアルモニタコマンド仕様：

• cds,<on1_off0>
• 約500ms毎にCdSセルの電位をAD変換器で読み取ってシリアルモニタへ表示する機能を制御します。
• <on1_off0>＝0では、表示機能は停止します。
• <on1_off0>＝1では、表示機能は有効です。
• 起動時のデフォルトは【cds,0】です。
• その他、こちらのコマンドも有効です。

　全て、デバッグやプログラム動作調整用のコマンドなので、メッセージボックスとしてはシリアルモニタ無しで自立できます。

実験のプレゼント

　今回は、M5StickC Plusに周囲明度を検知するためのCdSセル(下図)を接続してください。




　CdSセルには、2本の足が出ています。極性は無いので、2本の足をM5StickC Plus拡張I/OポートのG36／G25端子とGND端子に差し込んでください(下図)。




　以下図に実験中の様子を示します。CdSセルが、光を検知したい方向に向く🌻よう、少し曲げてあります。




　では、実験を進めてみましょう。

　　実験サンプル：

• 普通に明るい場所でM5StickC Plusの電源を投入すると、一旦暗さを検知するまで待機状態となっています。
• この待機状態では、内蔵LED(LED_BUILTIN)が点灯しています。
• CdSセルを何かで覆い隠すなど、暗い状態を作り出してみてください。
• 暗さを検知すると、内蔵LEDが消灯して、待機状態を終了したことを示します。
• もし、十分暗くしても、内蔵LEDが消灯しない場合、明度の判定閾値cds_THSHの調整が必要です。
• シリアルモニタから、【cds,1】コマンドを実行して、明るい状態と暗い状態のCdSセル読み出し値を確認してください。
• その中間ほどにcds_THSHを設定して、再コンパイル＆書き込んでください。
• 内蔵LEDが消灯すると、今度は、明るくなるのを待っています。
• いよいよ、大切な相手にプレゼントを渡す準備が整いました。
• ここで明るさを検知すると、メッセージが再生されますので、CdSセルを明るくして、メッセージが再生されることを確認してください。
• もし、十分明るくしても、メッセージ再生が始まらない場合、明度の判定閾値cds_THSHの調整が必要です。
• シリアルモニタから、【cds,1】コマンドを実行して、明るい状態と暗い状態のCdSセル読み出し値を確認してください。
• その中間ほどにcds_THSHを設定して、再コンパイル＆書き込んでください。
• 途中で失敗して、予期しないタイミングでメッセージの再生が始まってしまったら：
• 暗くして暫く待つと、メッセージ再生が中断して、内蔵LEDが点灯して待機状態に戻ります。
• あるいは、暗くしなくても、SW-Bを押し続けると、強制的に待機状態に遷移して内蔵LEDが点灯します。
• 箱の開閉状態を周囲明度で判定しているため、薄暗い場所で渡すと、「開いた」と言う判定を誤って、メッセージの再生が始まらない場合があります。
• 十分明るい場所で、相手に箱を渡して開けてもらいましょう。
• 状態遷移に関しては、こちらでご確認ください。

　メッセージボックスとして動作している様子を動画に収めてありますので、以下、ご参照ください。




　M5StickC Plus自体が、メッセージボックスと共に「プレゼント」と、ならない場合は、相手にメッセージを見てもらった後で、「M5StickC Plusは回収しま〜す。ハイ返して返して〜」って事になるのは、ご愛敬です（１＾＾；）。